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【コラム】ヤングケアラー問題と高齢化社会
はじめに
「ヤングケアラー」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。
家族の介護や日常生活の世話を担う子どもや若者のことを指し、近年社会課題として注目されています。
高齢化が進む日本では、家庭内で介護の担い手が不足し、若い世代が大きな負担を抱えるケースもあります。
本記事では、ヤングケアラーの現状や背景、高齢者介護との関係、支援のあり方について考えます。
ヤングケアラーとは
ヤングケアラーは、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義されています。
例えば、祖父母の介護を手伝ったり、病気や障がいのある家族の世話を日常的に担ったりする子どもや若者が該当します。
彼らは、心身ともに大きな負担を背負いながら、学業や友人関係の構築など、日常の生活も送らなければなりません。しかしその負担から普段の日常生活を送ることが難しくなり、場合によっては進学や就職などの機会が制限され、自分自身の将来に向けての選択肢に大きな影響を与えてしまう場合もあります。
いつから注目され始めたのか
ヤングケアラーの存在は、以前から指摘されていました。しかし社会的に注目を集め始めたのはごく最近と言われています。
ヤングケアラーという言葉は、1990年代初頭から使われはじめたと言われています。そして1993年にヤングケアラー研究で知られるソール・ベッカー氏が、
「15人のヤングケアラーの調査結果」
とする研究を発表し、ヤングケアラーの概念が広く認識されるきっかけとなりました。(※1)
そして日本国内では、2021年の全国調査「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」(※2)によって、ヤングケアラーの実態が広く明らかとなり、社会的な関心が高まったと言われています。
(※1)日本国際情報学会誌『kokusai-Joho』8巻1号「ヤングケアラー支援のための概観と現状-日本人と外国人児童生徒の学力保障の担保についての考察-」より➚
(※2)株式会社日本総合研究所「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」➚
ヤングケアラーが発生する要因と背景
ヤングケアラーが生まれる背景には、家庭内の様々な要因が複雑に関係しています。
(図1)の中で例を挙げると、経済的な困窮によって、保護者が長時間労働を余儀なくされる場合、家庭でのケアを担う人が不足することがあります。その結果、子どもや若者が祖父母の介護や家族の世話を担う状況が生まれてしまうことがあります。
(図1)引用:ヤングケアラー協会「ヤングケアラーの困りごとの背景にある要因より➚
高齢者とヤングケアラーとの関係
日本は世界でも有数の超高齢社会であり、要介護・要支援を必要としているご高齢の方が年々増加傾向にあります。
そこで厚生労働省が調査した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」より、世話を必要としている家族として「祖父母」と答えた中高生に、祖父母の状況を質問(図2)した結果、「高齢(65歳以上)」が最も高いことがわかります。
ヤングケアラーの発生は、複雑な家庭の事情が大きな要因のひとつと言えるでしょう。また超高齢社会が影響を与えた可能性も充分考えられます。
そして、この超高齢社会に対して、支援体制の整備が求められる中でも若年層が介護の一端を担わざるを得ない状況が生まれてきていると言えます。
(図2)引用:厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究について」より➚
ヤングケアラーの支援状況
国は、2024年に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律(令和6年施行)」において、国や地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象にヤングケアラーを明記しました。(※3)
これによって各市町村でのヤングケアラーの実態把握や、緊急性の高い人への優先的な支援など、さまざまなアプローチによって支援体制の整備を推進しています。
また、多数の自治体が、医療や福祉、教育機関との連携を密に取り、多機関の連携による包括的な支援に取り組んでいます。
(※3)参考:子ども家庭庁「ヤングケアラー支援の強化に係る法改正の経緯・施行について」➚
まとめ
高齢者の増加と家庭内の事情による介護者の不足など、非常に複雑に絡み合った要因から、ヤングケアラーの問題は今後も拡大していく可能性は十分考えられます。
若い世代が安心して自分の将来を描ける社会をつくるためには、ヤングケアラーの問題に社会全体で関心を持ち、適切な支援につなげていくことが重要です。
私たち一人ひとりがこの問題への理解を深めることが、より良い社会づくりにつながるのではないでしょうか。

